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データインテグリティ(DI)対応の課題やステップについてくわしく解説!

近年、製薬・化学業界を中心に「データインテグリティ(DI)対応」の重要性が急速に高まっています。データインテグリティ(DI)とは、データの正確性や一貫性、完全性を維持し、改ざんや欠落のない状態を保証する考え方です。

しかし、「ALCOA原則とは何か分からない」「DI対応を進めたいが、何から着手すべきか悩んでいる」という方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、データインテグリティ(DI)の基本概念から、ALCOA原則、DI対応を脅かす要因、現場で起こりやすい課題、具体的な対応ステップまでわかりやすく解説します。DI対応を強化したい方や、ラボ・品質管理業務のDXを進めたい方はぜひ参考にしてください。

データインテグリティ(DI)対応とは

データインテグリティ(DI:Data Integrity)とは、データの「完全性」を保証するための考え方や取り組みのことです。具体的には、データが生成されてから記録・処理・保存・廃棄されるまでのライフサイクル全体を通じて、正確性や一貫性が維持され、改ざんや欠落がない状態を確保することが求められます。

近年では、製薬・化学・食品業界などを中心に、データインテグリティ対応の重要性が急速に高まっています。その背景には、研究・試験・製造現場におけるデジタル化の進展があります。

以前は紙記録による管理が主流でしたが、現在では電子記録や分析機器データを扱うケースが増えています。一方で、電子化が進むことで、データ改ざんや誤操作、データ消失、不適切な権限管理といったリスクも顕在化するようになりました。そのため、FDA(米国食品医薬品局)やPMDA(医薬品医療機器総合機構)などの規制当局では、電子記録に対する信頼性確保を厳しく求めています。

特に医薬品業界では、試験結果や製造記録そのものが製品品質や患者の安全性を保証する根拠になります。もしデータに誤りや改ざんがあれば、不良製品の出荷や健康被害、リコールなどにつながる可能性もあります。そのため、DI対応は単なるIT対策ではなく、品質保証の根幹を支える重要な活動としての位置付けです。

また、近年では単にデータを保存するだけでは不十分とされており、監査証跡(オーディットトレイル)やアクセス制御、教育訓練、SOP整備など、組織全体でデータ信頼性を維持する体制づくりが重視されています。

つまり、DI対応ではシステムだけでなく、「人」「運用」「組織文化」を含めた総合的な管理が必要です。

データインテグリティ(DI)対応の要件ALCOA原則

データインテグリティ対応では、「ALCOA原則」と呼ばれる考え方が基本となります。ALCOAとは、データインテグリティを構成する重要な要素の頭文字を取ったものです。それぞれの頭文字の意味は以下のとおりです。

要素 内容
Attributable(帰属性) 誰が記録・作成したデータか明確である
Legible(判読性) 読みやすく理解できる状態である
Contemporaneous(同時性) 作業と同時に記録されている
Original(原本性) 原本または真正なコピーである
Accurate(正確性) 誤りがなく正確である

例えば紙記録であれば、署名や記録日時を残すことが求められます。電子記録の場合は、ユーザーIDや監査証跡によって操作履歴を追跡できる状態が必要です。

近年では、ALCOAに加えてさらに厳格な要件を追加した「ALCOA+」も重視されています。ALCOA+で追加される要件は以下のとおりです。

要素 内容
Complete(網羅性) 必要なデータが欠落なく保存されている
Consistent(一貫性) データや時系列に矛盾がない
Enduring(永続性) 長期間保存できる
Available(利用可能性) 必要な時に参照できる

さらに最近では、「ALCOA++」として、追跡可能性(Traceable)なども重要視されるようになっています。これは、「どのデータが、どの工程・どの操作・どの理由で変更されたのか」を完全に追跡できる状態を意味します。例えば、誰が変更したのか、いつ変更したのか、変更前後でどのような差分があったのか、なぜ変更が必要だったのかなどを明確に残さなければなりません。

データインテグリティ(DI)対応を脅かす要因

DI対応を進めるうえでは、データの完全性を脅かす要因を正しく理解することが重要です。DIリスクはシステム不具合だけで発生するわけではありません。実際には、人為的ミスや運用ルールの不備など、さまざまな要因が複雑に絡み合って発生します。ここでは、DI対応を脅かす要因について解説します。

故意による改ざん

DIを脅かす要因の中でも、特に重大なのが意図的なデータ改ざんです。

例えば、試験結果を都合よく修正したり、規格外データを削除したりする行為は、重大なDI違反に該当します。また、本来記録すべきデータを記録しない、他人のIDを利用して操作を行うといった行為も問題となります。

このような改ざん行為は、単に社内ルールに違反するだけではありません。医薬品や化学製品などでは、試験データや製造記録そのものが製品品質を保証する根拠になるため、データ改ざんは患者安全性や製品安全性にも直結します。

さらに、近年ではFDAやPMDAなどの規制当局による査察が厳格化しており、監査証跡を確認しながらデータ改ざんの有無を調査するケースも増えています。もし重大なDI違反が発覚すれば、行政指導や出荷停止、企業イメージ低下などにつながる可能性もあります。

意図的な改ざんを防止するためには、システムによる制御だけでなく、組織全体での意識改革も重要です。

例えば、アクセス権限を適切に設定し、監査証跡を定期的にレビューすることで、不正行為が起こりにくい環境を整備できます。また、ID共有禁止などの基本ルールを徹底することも重要です。

無知・不注意

DIリスクの多くは、悪意のないミスによって発生しています。例えば、入力ミスや転記ミス、記録漏れ、保存忘れなどは、日常業務の中でも発生しやすい問題です。作業効率を優先するあまり、本来の手順から逸脱した運用が行われるケースもあります。

例えば、一時的に紙へメモを書いて後から正式記録へ転記する、作業終了後にまとめてデータ入力する、といった運用は珍しくありません。しかし、このような行為はALCOA原則における「同時性」や「原本性」の観点で問題となる可能性があります。

さらに、パスワード共有やログイン状態の端末を複数人で使用するケースも見られます。現場では「業務効率化」のつもりで行われていることもありますが、誰がどの操作を行ったのかを正確に追跡できなくなるため、DI上の重大なリスクとなります。

こうした問題の背景には、教育不足やDIに対する理解不足があるケースも少なくありません。担当者自身が「何がDI違反に該当するのか」を十分に理解していない場合、悪意がなくても不適切な運用が発生しやすくなります。

システム面の問題がミスを誘発するケースもあります。例えば、監査証跡機能を持たない古いシステムでは、変更履歴を適切に追跡できません。さらに、分析機器がスタンドアロンPCで個別管理されている場合、データがサイロ化し、組織全体での統制が難しくなることがあります。

加えて、SOP(標準作業手順書)の未整備やレビュー体制不足によって、担当者ごとに運用方法がばらつくケースもあります。

このような問題を防ぐためには、単にシステムを導入するだけでは不十分です。継続的な教育訓練を通じてDIへの理解を深めるとともに、SOP整備や業務標準化を進める必要があります。

データインテグリティ(DI)対応の課題

DI対応の重要性は広く認識されるようになっていますが、実際の現場ではさまざまな課題が存在します。DI対応は単なるシステム導入では完結せず、組織全体の運用や文化にも関わるため、短期間で解決できるものではありません。ここでは、DI対応で多くの企業が直面する代表的な課題として、以下の3点について解説します。

  • 経営陣の関与の課題
  • 文書作成の負担
  • 紙媒体の管理による問題

経営陣の関与の課題

DI対応では、現場だけでなく経営層の積極的な関与が不可欠です。しかし実際には、「DIは品質保証部門だけの問題」と捉えられてしまい、全社的な取り組みとして十分に推進できていないケースも少なくありません。

DI対応では、システム導入や業務フローの見直し、教育訓練、SOP整備、バリデーション対応など、多くのリソースが必要になります。そのため、現場だけで対応を進めようとしても、予算や人員不足によって十分な改善が進まないこともあるでしょう。

経営層がDIを「コスト」や「査察対応」としてしか捉えていない場合、短期的な費用対効果だけが重視され、本質的な改善につながりにくくなります。

本来、DI対応は単なる規制対応ではありません。データの信頼性を高めることは、製品品質や企業ブランドを守ることにつながります。データ活用基盤を整備することで、研究開発効率向上や業務改善にも発展させることが可能です。

経営層自身がDI対応を「品質基盤強化」や「DX推進」の一環として理解し、全社的な方針として推進することが重要です。

文書作成の負担

DI対応では、多くの文書管理業務が発生します。例えば、SOP(標準作業手順書)やバリデーション計画書、教育訓練記録、変更管理文書など、規制対応に必要な文書は非常に多岐にわたります。

文書は単に作成すれば終わりではありません。改訂履歴の管理や承認フロー、定期レビューなども必要になるため、紙運用中心の環境では膨大な工数が発生します。さらに、複数部門で同じ情報を個別管理している場合、内容の不整合や最新版管理ミスが発生するリスクもあります。

その結果、本来注力すべき研究・試験業務よりも、文書作成や管理作業に多くの時間を取られてしまうケースも少なくありません。このような課題を解決するためには、電子文書管理システムやワークフローシステムを活用し、文書管理業務そのものを効率化することが重要です。

紙媒体の管理による問題

DI対応では、紙媒体による管理も大きな課題となります。従来のラボでは、試験記録や実験ノート、承認記録などを紙ベースで管理しているケースも多く見られます。

しかし、紙運用では過去記録の検索に時間がかかったり、大量の保管スペースが必要になったりするなど、多くの問題があるのが現実です。手書きによる記録ミスや判読性のばらつき、記録紛失なども発生しやすくなります。

さらに、紙記録ではデータ共有やレビューにも時間がかかります。例えば、承認のために書類を回覧したり、保管庫から必要な記録を探したりする作業は、業務効率低下につながるでしょう。

紙からExcelや別システムへ転記する運用では、転記ミスや記録漏れも発生しやすくなります。特に大量の試験データを扱う現場では、こうした人的ミスがDIリスクを高める原因です。紙運用では「原本」が1つしか存在しないため、災害や紛失によるリスクも無視できません。

そのため、近年では電子記録や電子署名(ER/ES)への移行を進める企業が増えています。電子化によって、検索性や情報共有性を向上できるだけでなく、監査証跡による変更履歴管理も実現しやすくなります。さらに、分析機器との自動連携によって、人手による転記作業そのものを削減できる点も大きなメリットです。

データインテグリティ(DI)対応のステップとポイント

DI対応を進める際には、単にシステムを導入するだけでは十分ではありません。データの完全性を維持するためには、現状業務の把握から運用ルール整備、教育、継続的なレビューまで含めた総合的な取り組みが必要です。

また、DI対応は一度整備して終わるものではなく、継続的に改善しながら維持していくことが重要になります。ここでは、DI対応を進める際の代表的なステップとポイントとして、次の4点について解説します。

  • 経営陣の積極的な関与
  • リスクの把握
  • 高度な認証技術・システムによる制御
  • ルールの徹底

経営陣の積極的な関与

DI対応は、品質保証部門だけで完結する取り組みではありません。研究・製造・品質・ITなど複数部門に関わるため、全社横断的に推進する必要があります。そのためには、経営層がDI対応を重要な経営課題として位置付け、必要な予算や人員を確保することが重要です。

また、DI対応を単なる「査察対策」としてではなく、品質基盤強化やDX推進の一環として捉えることで、長期的な改善活動につなげやすくなります。

リスクの把握

DI対応では、まず自社業務のどこにリスクがあるのかを把握する必要があります。例えば、紙運用が多い工程や、手入力・転記作業が多い業務、監査証跡が残らないシステムなどは、DIリスクが高くなりやすいポイントです。

また、全てのデータを一律に管理するのではなく、品質や患者安全性への影響度を踏まえて優先順位を決める「リスクベースアプローチ」も重要になります。特に重要データや重要工程から優先的に改善を進めることで、効率的にDI対応を進めやすくなるでしょう。

高度な認証技術・システムによる制御

DI対応では、人の注意力だけに依存しない仕組みづくりも重要です。例えば、電子署名やアクセス権限管理、多要素認証などを活用することで、不正アクセスや不適切な操作を防止しやすくなります。

分析機器とLIMSなどを連携し、データを自動取得することで、手入力や転記によるミスを削減できます。監査証跡機能によってデータ変更履歴を自動記録することで、変更内容を追跡しやすくなり、データ信頼性向上につながります。

ルールの徹底

DI対応では、システムだけでなく運用ルールの徹底も欠かせません。例えば、データ修正時の手順や電子署名ルール、レビュー方法などをSOP(標準作業手順書)として明文化し、現場全体で統一運用する必要があります。

ルールを作るだけでなく、教育訓練を継続的に実施し、「なぜその運用が必要なのか」を現場へ浸透させることも重要です。定期的な監査証跡レビューや内部監査を実施することで、ルール逸脱や潜在的なリスクを早期に発見しやすくなります。

西川計測のサービスのご紹介

西川計測では、ラボインフォマティクス領域における幅広いソリューションを提供しており、DI対応を支援するためのシステム・コンサルティングの両面からサポートを行っています。

代表的なソリューションが、LIMS「WeLS」と電子実験ノート「NEXS」です。

WeLSは、試験依頼から分析、結果承認までの試験業務を一元管理できるLIMSです。分析機器との連携によってデータを自動取得できるため、人手による転記作業を削減し、データ信頼性向上につなげられます。

また、試験進捗管理やトレーサビリティ強化にも対応しており、品質管理業務全体の標準化・効率化を支援します。

一方、NEXSは研究開発業務向けの電子実験ノート(ELN)です。

実験条件や考察、画像データなどをデジタルで一元管理できるため、検索性や情報共有性を向上できます。また、紙ノート運用で発生しやすい記録漏れや管理負荷の軽減にも役立ちます。

さらに西川計測では、システム提供だけでなく、DI対応に必要なデータガバナンス構築やCSV支援、運用改善支援なども実施しています。製薬業界をはじめとした厳格な規制環境に対応してきた知見を活かし、現場運用まで見据えたDI対応をサポートできる点が強みです。

規制当局の動向や業界要件を踏まえながら、お客様の業務や課題に合わせた最適なDIロードマップ提案にも対応しています。

西川計測のラボインフォマティクスについての詳細はこちら

まとめ

DI対応は、単なる査察対策ではなく、製品品質や企業信頼性を支える重要な取り組みです。近年では、電子記録や分析機器データの活用が進む一方で、データ改ざんや誤操作、運用不備などのリスクも高まっており、ALCOA+原則に基づいた厳格なデータ管理が求められています。

DI対応ではシステム導入だけでなく、組織体制や運用ルール、教育訓練なども含めた総合的な取り組みが重要になります。特に、紙運用や属人的な管理が残っている環境では、電子化やシステム連携を進めることで、データ信頼性向上と業務効率化を同時に実現しやすくなります。

さらに、DI対応を継続的に維持するためには、現場だけでなく経営層も含めた全社的な推進体制が不可欠です。

自社だけでの対応に課題を感じている場合は、専門知識や実績を持つパートナーと連携しながら、段階的にDI対応を進めていくことをおすすめします。

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